『 僕が星になるまえに 』
公式サイト
2010年 イギリス
上映時間 93分
監督 ハッティー・ダルトン
僕たちは辿り着けるだろうか
運命のその先に――。
2010年のインディーズ映画が今になって日本公開されるとは!カンバーバッチ人気恐るべし!
と思っていたのだが、日曜の午後だと言うのにお客は私を含めたったの二人。
さすがにこんな田舎まではカンバーバッチ人気も浸透していなかった模様。
末期ガンで余命わずかの青年ジェームズ(ベネディクト・カンバーバッチ)が三人の親友と共に
“世界で一番好きな場所”であるウェールズ地方のバラファンドル湾を目指すロードムービーは
少女マンガ風の甘い邦題とは裏腹に、苦くて重い作品だった。
以下結末に触れています。
旅の始まりは少年の様にはしゃぐ4人に微笑ましい気分になるが
やがてそれぞれが抱えている問題や旅の本当の目的が明らかになってくる。
ジェームズのこの旅の目的が、この地で自らの命を絶つことだと知った時は
なんて身勝手で残酷な決断なのだろうと思った。
残された3人は自分の無力さを嘆きながらその後の人生を生きることになる。
最後まで自分に寄り添ってくれた親友たちにするにはあまりにも酷い仕打ちではないか、と。
しかし原題の『 THIRD STAR 』の意味を考えた時
必ずしもそればかりではないのかもしれない、と思った。
THIRD STAR(三番目の星)とは劇中でジェームズが
ピーターパンのお話の中に出てくるネバーランドへの道しるべである二番目の星を勘違いして言った言葉。
星空の下で仲間たちに人間の存在意義を問いかけ
それぞれが抱える問題から目を逸らし無為に生きている彼らをなじりながら
「ならばお前は一体何を成し遂げた?病気になるまで何もしなかっただろ?」
と問われるジェームズもまた、無為に生きてきた、大人になりきれない大人の一人。
末期ガンの苦しみから逃れる為だけならば、一思いに薬を飲めば済む。
しかしジェームズはそれではダメなのだと言った。
自ら海に入り、泳ぎ、力尽きてもがき苦しみながら息絶える・・・そうでなければダメなのだ、と。
彼は親友たちに生きることの意味と人生について考えて欲しかったのかもしれない。
何一つ成し遂げることの出来なかった人生で
それが自分に出来る最後のことだと思ったのかもしれない
・・・なんて思うのはちょっとジェームズのこと買い被り過ぎかしら?笑
二番目の星を曲がった先にあるのは、大人にならない子供たちの国、ネバーランド
そしてジェームズは大人への道しるべとなるべき三番目の星になった。
この旅は大人になりきれない男たち4人が大人になる為の旅だったのかもしれない。
<満足度> ★★★
by hasikkoami
| 2013-11-14 22:17
| 映画館