「楠の実が熟すまで」
諸田玲子/著
角川書店 2009年07月
将軍家治の時代、帝がおわす禁裏では出費が異常に膨らんでいた。経費を負担する幕府は公家たちの不正を疑うが調査は難航。「楠の実が熟すまでに証拠を見つけよ」と、御徒目付の中井清太夫は、姪の利津に隠密御用を命じるが…。
わずか十数ページの間に、姿なき刺客によって3人もの命が次々と奪われていく
不気味な幕開けにスリリングな展開を期待したのだが、その後は主人公利津の
お役目と自分の思いの狭間で揺れる女心に重点が置かれメロドラマの雰囲気に。
自分を慕ってくれる幼い継子への愛情や敵方である夫へ惹かれてゆく戸惑い苦しみも切なくて
恋愛物としては面白いが、サスペンスを期待していたのでその点ではちょっと物足りない。