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本と映画と時々音楽

<   2016年 08月 ( 14 )   > この月の画像一覧

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パトリシア・ハイスミス∥著
宮脇 孝雄∥訳
河出書房新社 2005.1

女流ミステリ作家、パトリシア・ハイスミスによる単行本未収録の初期作品を集めた短篇集。人間心理の危うさを鋭く描く個性は、この時点ですでに確立されていた! ファン垂涎の一冊!


『太陽がいっぱい』のイメージから日本ではミステリ作家のイメージが強い
パトリシア・ハイスミスだけれど、ご本人はそう言われるのが不本意だったらしい。
そしてこの短編集に収められている作品たちも決してミステリではない。
しかしどの作品にも、どこか不穏な空気が立ち込め、ヒリヒリする様な、ゾクゾクするような、
妙に落ち着かない気分にさせられるのは、ある意味サスペンス小説と言えるかも。
後味の悪い作品がほとんどの中、最後の「ルイーザを呼ぶベル」の優しさが嬉しい。
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by hasikkoami | 2016-08-19 07:49 | 図書館 | Comments(2)
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アンドレアス・セシェ∥著
酒寄 進一∥訳
西村書店 2016.6

内気な青年ヤニスはアテネの古びた書店で、神秘的な女店主リオに出会い本談義に夢中になる。しかし、リオはふいに消息を絶つ。手がかりを探すヤニスが辿り着いた世界とは? 現実と虚構と謎を織り込んだ、本好きのための物語。


「囀(さえず)る魚」と言うミステリアスなタイトルと
美しい装丁が何とも魅力的な本作。
本好きのための物語、とあるだけに
次から次へと出てくる古今東西の本や作家の蘊蓄、
本好きなら一度はしたことがありそうな妄想の数々は
読んでいてとても楽しいのだけれど
若干ヤングアダルト小説風でもあり、若い人向きかな、と言う印象。
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by hasikkoami | 2016-08-18 07:51 | 図書館 | Comments(0)
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アレクサンダー・マクラウド∥著
小竹 由美子∥訳
新潮社 2016.5

カナダの街ウィンザーで煉瓦敷きに励む男たち。働き者の高校生がバイトを辞めることになり、リーダー格のトムが皆をバーに誘うが、そこでまさかの事件が…。誰の人生にも起こりうる、瞬間のドラマを切り取った7篇。


本書の著者アレクサンダー・マクラウドの父親である
アリステア・マクラウドは大好きな作家。
(と言いつつ唯一の長編である「彼方なる歌に耳を澄ませよ」は未読^^;)
教職に就きながらコツコツと短編小説を書き、
31年間にわずか16篇という寡黙な作家だった父アリステア。
同じく教職の傍ら書きためた短編集でデビューを果たした息子アレクサンダー。
まさに蛙の子は蛙と言うべきか、父親と切り口やテイストは違うけれど、
根っこの部分ではしっかり繋がっている気がする、期待以上に素晴らしい短編集だった。
これからの作品が大変楽しみではあるが、
どうやら寡作なところも父親譲りらしいので、気長に待つとしよう。
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by hasikkoami | 2016-08-17 07:45 | 図書館 | Comments(8)
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スティーヴン・ミルハウザー∥著
柴田 元幸∥訳
白水社 2016.6

何を求めているかもわからず落ち着かない少女、ひとつの小説を長年書きつづけている男…。夏の夜更け、町中をさまよう人びとが交叉し、屋根裏部屋の人形たちが目を覚ます。およそ半世紀前のアメリカを舞台とするおとぎ話。


アメリカ東海岸の海辺の町の夏の一夜。
人々は月の光に誘われる様に街を彷徨い、
ショウウインドウのマネキンや屋根裏部屋の人形達は、月の光に生を受け動き出す。
それぞれの孤独を抱きしめて生きる彼らは、寂しいけれど、決して悲しいわけではない。

帯には「月の光でお読みください」とある。
ああ、なんてロマンチック。。。(老眼の私には無理だけど)
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by hasikkoami | 2016-08-16 08:05 | 図書館 | Comments(0)
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呉 明益∥著
天野 健太郎∥訳
白水社 2015.5

1980年代初頭、台北。物売りが立つ歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた-。今はなき「中華商場」とそこに生きた人々のささやかなエピソードを紡ぐ、ノスタルジックな連作短篇集。


ノスタルジックだけど変にベタベタしてなくて
流れて行く時間を淡々と見つめている感じがいい。

80年代初頭の台北の街と人々の姿は
ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンの映画を観ているようで、
特に「ギター弾きの恋」なんて、まんま『恋恋風塵』みたいだわぁと思っていたら
作中にも『恋恋風塵』の話が出てきて、やっぱり意識してたのね~と納得。
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by hasikkoami | 2016-08-14 16:16 | 図書館 | Comments(0)
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堀江 敏幸∥著 
角田 光代∥著
プレジデント社 2015.10

『dancyu』の好評連載「私的読食録」を書籍化。
2007年4月号~2015年7月号に掲載された100本の書評エッセイを収録する。
堀江敏幸×角田光代100回記念対談も掲載。


角田さんと堀江さんが見開き2ページづつ交代で、
一冊の本と、その本に出てくる「食」について綴る
食べ物エッセイであり、読書案内でもある一冊。

グルメには程遠く、自分一人なら三食シリアルでOKなほど、食に関心のない私にも
「本を読むことでしか食べられない」大好物は幾つかあって、
角田さんの「ぐりとぐらのカステラ」「ちびくろサンボのバター」「ハイジの白パン」などはまさしくビンゴ!
対して堀江さんパートは、へ~ほ~なるほど~とお勉強感覚で。

ちなみに私が大人になってからの「本を読むことでしか食べられない」大好物は
鬼平犯科帳の"浅利と大根の小鍋立て"
何度読んでも涎が出るほど美味しそうで、実際作っても美味しいに違いないのだが、
きっとそれがどんなに美味しくできたとしても
本を読んでいる時の味には絶対に敵わないと分かっているのであえて作らないでいる。
(本当は単に浅利をむき身にするのが面倒なだけ)
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by hasikkoami | 2016-08-10 08:16 | 図書館 | Comments(0)
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吉田 修一∥著
文藝春秋 2016.3


大切な人の不倫、不正、裏切り。
正義によって裁くか、見ないふりをするか。
やさしさに流されてきた3人の男女が立ち止まるとき-。新次元の群像ドラマ


「わたしを離さないで」を思わせる台詞が出てきてまさかと思ったけれど、
本当にそのまさかだったとは...
吉田さんの新境地とも言える作品ではあるけれど
個人的にはあのラストにどうにも違和感があって
普通の連作短編集として読みたかったかなぁ...とも思う。
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by hasikkoami | 2016-08-09 07:56 | 図書館 | Comments(0)
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角田 光代∥著
朝日新聞出版 2016.1

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、
子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、
彼女の境遇にみずからを重ねていく。
虐待死事件と<家族>であることの光と闇に迫る心理サスペンス。


児童虐待のニュースを耳にする時、大半は怒りの感情しか沸いてこないが、
時には、そこへ追い詰められた母親の辛さを思い、胸が締め付けられることもある。
子育てを経験した者なら誰しも、多かれ少なかれ里沙子と同じ様な経験があるはずで、
読みながら自分と里沙子、ひいては子供を殺した母親との境が分からなくなる。
既に子育てを終えた私ですら、これほど現実味を持って読んだということは、
リアルタイムで子育てしている人が読んだら、どうなってしまうのかと空恐ろしくなる。
私だけではないのだ...と多少なりとも心が軽くなるのか、それとも・・・
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by hasikkoami | 2016-08-08 07:59 | 図書館 | Comments(0)
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エマ・ドナヒュー∥著
土屋 京子∥訳
講談社 2011.10

ぼくはママと住んでいる。知っているのはこの部屋とテレビの世界だけ。なぜならぼくはこの部屋で生まれて一度も外に出たことがないから…。
極限状況を生きる人間の勇気と気高さを描いた小説。

映画『 ルーム ROOM 』の原作。

映画とは違い、こちらはジャックの完全な一人称。
文字は全てひらがなで、文章もたどたどしいものの、
だからこそ尚更、思うまま、感じたままに描かれる"母と子"2人だけの世界。
曇りのない5歳児の目を通して描かれるのは
閉ざされていたからこそ無限であり、境界がないからこそ息苦しい世界の残酷さと複雑さ。
大きさは違えど、我々は皆何かしらの「部屋」に閉じ込められているのかもしれない。
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by hasikkoami | 2016-08-07 16:56 | 図書館 | Comments(0)
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ジュリー・オオツカ∥著
岩本 正恵/小竹 由美子 ∥訳
新潮社 2016.3
「写真花嫁」としてアメリカに渡った日本の娘たち。子を産み育て、働き、
ようやく築いた平穏な暮らしも、日米開戦とともにすべてが潰え…。
「わたしたち」を主語に、一人ひとりのエピソードを綴る、
痛ましくも美しい中篇小説。


20世紀初頭、写真だけを頼りにアメリカに嫁いだ「写真花嫁」の存在は
以前ドキュメンタリー番組で見たことがあり、知ってはいた。
しかしその時は、これほどまでに心を揺さ振られはしなかった。

そっけないほど淡々とした文体で綴られる、一人称複数形の「わたしたち」の無数のエピソード。
その小さな点の一つ一つが、さながら点描画の様に彼女らの人生をくっきりと浮かび上がらせ、
ひっそりとした囁きの様な声の一つ一つが、静かに心に突き刺さる。
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by hasikkoami | 2016-08-07 13:48 | 図書館 | Comments(0)