「八日目の蝉」
角田光代/著
中央公論新社 2007年3月
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。
作品は不倫相手の子供を誘拐した女の逃亡生活を描く第1章と、誘拐された子供のその後を描く第2章に分かれている。1章では、許されないことだとは分かっていながらも、つい誘拐犯の女に感情移入してしまい、「逃げて!逃げて!」と祈るような気持ちになったのだが、2章では、そんな風に思った自分が許せないほど胸が痛くなる。そしてその胸の痛みに柔らかな光を当ててくれるようなラストシーン。久しぶりにのめり込むようにして読み終えた。