「実験」
田中 慎弥【著】
新潮社 (2010/05/30 出版)
文芸誌の新人賞を貰って4年が経った。
しかし小説一本の生活は想像していた以上に厳しかった…。
表題作ほか、苦い無為の日々を送る男たちを描く全3篇を収録。
第146回芥川賞受賞(の記者会見)で一躍有名になった田中さん。
文学賞にまるで興味のない我が家の長男でさえ名前を知ってる位だから、これは相当の知名度アップ(笑)
田中さんの作品は主人公が大抵嫌なヤツで、読んでいてイライラするし後味も悪い。
その所為か読み終わると疲労感に襲われ、暫くはこの人の作品は読みたくないなぁ...
とすらと思うのについまた手にとってしまう...と何とも不思議な魅力がある。
そう言う意味では今回の会見は、とても田中さんらしいのかもしれない(笑)
そして今回の表題作「実験」の主人公もやはり嫌なヤツだ。
うつ病の友人を自分の小説のネタにする為にわざと自殺に追い込もうとするなんて
嫌なヤツを通り越し、最早人間性の問題。
読みながらイライラどころか怒りすら湧いてきたが、読後感は悪くない。
他、ちょっとファンタジー(ホラー?)っぽい「汽笛」と
主人公がただひたすら独白する、これぞ田中スタイル、の「週末の葬儀」収録。
by hasikkoami
| 2012-01-31 09:15
| 図書館